日経トレンディ「2026年ヒット予測ベスト30」とヤフー・データソリューション「ネクストトレンド予測2026」からトレンド予測

日経トレンディ「2026年ヒット予測ベスト30」とヤフー・データソリューション「ネクストトレンド予測2026」は、それぞれ異なる手法で2026年の消費トレンドを予測しており、両者を組み合わせることで2026年の日本における消費動向の全体像が浮かび上がる。なぜなら、日経トレンディは編集部の専門家による定性的な分析を中心としているのに対し、ヤフー・データソリューションはYahoo!検索のビッグデータを活用した定量的な予測モデルを用いているからだ。具体的には、前者は「売れ行き」「新規性」「影響力」という3つの評価軸で商品やサービスを選定し、後者は検索データの変化率から将来のヒットを数理的に予測している。この2つのアプローチが示す共通点と相違点を分析することで、2026年の消費社会の本質的な変化が明らかになる。

2026年のヒットは「苦労キャンセル界隈」に登場しそうで、「苦労は買ってでもしろ」といわれた時代も今は昔となり、コストをかけてでも苦労を”キャンセル”して効率化するのが今流だ 。特にタイパ志向が加速し続けており、労せず一定以上の質の体験をもたらす商品やサービスが、次なるヒットの芽となる 。

この「苦労キャンセル界隈」という造語は、2026年の消費トレンドを象徴的に表現している。従来、日本社会では「苦労を通じて成長する」「努力は美徳」という価値観が支配的だったが、この概念は時間効率を最優先する新しい価値観にシフトしている。ここでいう「苦労」とは、語学学習に費やす何千時間もの時間、レストラン予約のために何度も電話をかける手間、専門店まで足を運ぶ移動時間、長時間の待ち時間などを指す。

「苦労キャンセル界隈」の強い味方となるのは生成AIで、特に進境著しい分野が「翻訳」と「買い物」だ 。

翻訳領域の革命:
言語の壁を越えるために、これまで何年もかけて語学を学習する必要があった。しかし生成AIの登場により、この膨大な時間投資が不要になりつつある。生成AIによる翻訳サービスは、語学学習に要する膨大な時間と労力を”消す” 。

生成AIの翻訳は単なる単語の置き換えではなく、前後の文脈を捉えて意味を正確に理解し、音声入力であれば声色などからニュアンスも意識して翻訳してくれる。これにより、旅行、ビジネス、学習など、あらゆる場面で言語の壁が事実上消滅する。2026年には、多言語リアルタイム翻訳がヒット予測の上位に入っており、スマートフォンやイヤホン型デバイスを通じて、母国語しか話せない人々が世界中の人々と自然にコミュニケーションできる時代が到来する。

買い物領域の革命:
従来のオンラインショッピングでは、消費者自身が商品を検索し、レビューを読み、価格を比較し、最終的な購入決定を下す必要があった。このプロセスは時に数時間から数日かかることもある。

Amazonの「Alexa+」では、欲しいものが漠然としていても的確な商品を提示し、日用品の補充を提案するなど、買い物体験が変わる 。生成AIは消費者の過去の購買履歴、検索パターン、さらには生活スタイルまで分析し、消費者が「そろそろ洗剤が切れそうだ」と気づく前に提案してくれる。

これは単なる便利さの向上ではなく、「検索」や「比較検討」という行為自体が不要になる消費パラダイムの根本的な転換を意味する。消費者は「探す」のではなく、AIが提示する選択肢の中から「選ぶ」だけになる。

「時産」や「省エネ」には惜しみなくコストをかけるが、上がり続ける食費をできるだけ抑えたいという消費マインドが高まる 。しかし、ここで重要なのは、単に「安ければいい」というのではなく、「エコノミーな価格で専門店並みの味」を求めるという点だ。

レンジで2分生パスタの衝撃:

マ・マーの「レンジで2分 もちもち生パスタ」は、これまでレストランで食べるのが当たり前だった生パスタをレンチン調理に対応させた 。従来、生パスタは作りたてを提供するレストランで食べるもので、家庭では乾燥パスタが一般的だった。しかし製造技術の進歩により、常温保存可能でレンチン調理できる生パスタが実現した。

この商品が象徴するのは、「特別な日にレストランで食べる贅沢品」が「平日の夕食に気軽に楽しめる日常品」へと変化する消費の民主化だ。価格は数百円程度だが、味わいはレストランの生パスタに近い。これは消費者にとって「専門店の味を手軽に自宅で」という理想を実現している。

セルフ式ラーメンの革新:

大阪・関西万博会場内のセブンイレブンに設置されたラーメン”調理”マシンは、26年以降にコンビニで展開されるかもしれず、90秒程度の”調理”時間を武器に、コーヒーと並ぶコンビニグルメのヒット商品になるのは必至だ 。

このマシンの重要性は、単に「早い」だけではなく、「ラーメン店の出来たてに迫る味を再現する」点にある。超人気店監修の味を、コンビニで、しかも90秒で食べられる。これは外食産業に対する大きな挑戦状だ。

従来、「早い・安い・うまい」の3つを同時に実現するのは困難とされていた。ファストフードは早くて安いが味は妥協、高級店は美味しいが時間も金もかかる。しかしエコノミーグルメは、技術革新によってこの三角形のバランスを根本から変えようとしている。

生チョコの民主化:

生パスタや生チョコなど、これまでは「特別なもの」とされてきた食べ物や飲み物が、製造技術の進歩により手軽かつ安価に家庭で味わえるように なる。手軽に持ち歩いて好きな時に食べられる”ジェネリック生チョコ”も話題だ。

「生」系食品は、これまで製造・保存・流通が難しく、専門店でしか提供できなかった。しかし包装技術、保存技術、製造技術の進化により、コンビニやスーパーで買える商品になった。これは食品業界における技術革新の成果であり、2026年はこの流れがさらに加速する。

ムード消費とは、論理的な必要性ではなく、「気分」や「感情」が購買の原動力になる消費行動だ。「気分が良くないからパンを買った」「気分を上げるために新しい服を買う」など、感情的な充足が消費の主要な動機になる。

ザ・ブレスコの事例:

米国発のマウスウォッシュ「ザ・ブレスコ」がマスク生活を経て高まる口臭ケア需要の追い風を受け、「ムード消費」マウスウォッシュとしてSNS売れが期待される 。

この商品が5位にランクインした理由は、単に「口臭を防ぐ」という機能だけではない。アルコール不使用で刺激控えめ、話題の有用成分「亜塩素酸Na」を配合し、口臭原因菌の殺菌と増殖抑制により最大12時間の予防効果がある という機能性に加えて、「使うことで気分が上がる」「自信が持てる」という感情的価値が評価されている。

マスク生活が終わり、対面でのコミュニケーションが復活した現代、口臭への意識が高まっている。しかしそれは単なる衛生意識ではなく、「人と会う前に使うことで自信を持てる」というメンタル面でのサポートとしての価値が大きい。

「推し活」は消費者が特定のアイドルやキャラクターを応援する活動だが、「推され活」はその逆で、企業やブランドから消費者が「推される」体験だ。

これは、マス広告で不特定多数に訴求するのではなく、個々の消費者に合わせたパーソナライズされたマーケティングを意味する。生成AIの発達により、企業は個々の消費者の嗜好や行動パターンを分析し、「あなたにぴったりの商品」「あなたのためだけの特別オファー」を提示できるようになる。

消費者は「自分が特別扱いされている」という感覚を得られ、ブランドへのロイヤルティが高まる。これは従来のマスマーケティングから、1対1のリレーションシップマーケティングへの移行を示している。

大阪・関西万博で展示された技術が社会実装されるフェーズに入る 。万博は単なるイベントではなく、未来技術の実証実験場としての役割を果たしている。

2025年に開催された大阪・関西万博では、AI、ロボット、自動運転、VR/AR、バイオテクノロジーなど、様々な先端技術が展示された。これらの技術は万博期間中は「未来のデモンストレーション」だったが、2026年以降、実際のビジネスや生活の場に導入され始める。

例えば、万博会場で実験的に導入された自動運転バス、AI通訳システム、ロボットによる接客サービスなどが、2026年には商業施設や観光地で実用化される。万博は技術の「お披露目の場」であり、その翌年は「社会実装の年」となる。

日本はもはや夏と冬しか感じられず、2025年は、4月や10月にも全国各地で最高気温が30度を超える真夏日があった 。夏が長く、そしてより暑くなっていることで、熱中症などへの対策が急務となっており、本来は屋外向けだったアクティビティーを室内空間で楽しめる施設などに注目が集まっている 。

この「二季の国」現象は、単なる環境問題ではなく、消費行動に直接的な影響を与えるビジネスチャンスだ。春と秋という穏やかな季節が短くなり、極端な暑さと寒さが支配する気候になると:

  • 従来の四季を前提とした商品企画が通用しなくなる
  • 屋外アクティビティの室内化が進む(例:屋内キャンプ施設、室内スポーツ施設)
  • 季節商品の販売期間が変化する(冬物の販売開始が遅れ、夏物の販売期間が延長)
  • 冷暖房設備の需要が増加し、省エネ技術への投資が活発化

イオン内に芝生の広場を備えた大型の屋内施設が続々とオープンしているのは、この「二季の国」現象への対応だ。子どもたちは安全で快適な室内で、本来屋外で楽しむべき遊びを体験できる。

週末、近所の食品スーパーで「冷食・アイス食べ放題」を体験できるようになり、店内の冷凍食品・アイスを90分間、大人は税込み2000円で味わい尽くせる 。

この商品の革新性は、「試食」という概念を「食べ放題体験」に拡張した点にある。従来、スーパーでの試食は「購入前の品質確認」だったが、このサービスは「いろいろな商品を少しずつ楽しむ」という新しい価値を提供している。

「背徳感」というキーワードが重要だ。普段なら1つか2つしか買わない高級アイスを、90分間好きなだけ食べられる。この「普段できないことをする」という体験自体が商品価値になっている。2000円という価格設定は、通常購入する冷食・アイスの合計金額よりも高いかもしれないが、「いろいろ試せる楽しさ」「特別な体験」という付加価値が価格を正当化している。

昨年発表したレポートにおいて、もっとも関心を集めたのはぬいぐるみの「ラブブ」で、ヒット予測モデルが予測した時点の検索数と比較して、最大で約240倍も増加するほどの上昇を見せ、2025年流行語大賞の候補にも選ばれるなど、ヒット予測モデルの可能性を改めて感じさせる結果となった 。

この240倍という数字は、データ分析による予測の精度を示す驚異的な結果だ。ヤフー・データソリューションは、Yahoo!検索のビッグデータを活用し、検索キーワードの変化率、検索者の属性、関連キーワードの広がりなどを総合的に分析することで、「これから流行る」商品を早期に発見できる。

2025年、シール文化が再び脚光を浴び、かつてない盛り上がりを見せている。ぷっくり質感が特徴の「ボンボンドロップシール」が火付け役となり、2026年には”大人が楽しむシール”へと進化 する。

検索データによると、「大人のシール帳」「大人の図鑑シール」「おはじきシール」など、懐かしさと新しさを兼ね備えたキーワードが上昇している。シールは子ども時代の遊びだったが、大人になった現在、それを「大人の趣味」として再評価する動きがある。

これは単なる懐古趣味ではなく、デジタル疲労への反動としての「アナログ体験の価値再発見」でもある。スマホやPCの画面ばかり見ている現代人にとって、物理的なシールを手に取り、ページに貼り付けるという行為は、触覚を伴う満足感を提供する。

検索者の属性を見ると、20代から40代の女性が中心で、Instagram等のSNSでシール帳の写真を共有する文化が形成されている。これは「ソロ活」(一人で楽しむ趣味)の一環としても位置づけられ、忙しい日常の中での小さな癒しとなっている。

「コグマパン」は、韓国語で「さつまいも」を意味する「コグマ」にちなんで名付けられたパンで、さつまいもを練り込んだ生地や、濃厚なスイートポテト餡を包んだ甘い味わいが特徴 だ。見た目も本物のさつまいもそっくりに仕上げているものが多く、SNS映えすると話題 になっている。

このトレンドは、日本における韓国食文化の浸透を示している。2010年代後半から始まった「第四次韓流ブーム」は、K-POPやドラマだけでなく、食文化にまで広がっている。チーズタッカルビ、チーズハットグ、ダルゴナコーヒーなど、韓国発の食トレンドが次々と日本で定着してきた。

コグマパンの特徴は「インスタ映え」と「本格的な味」の両立だ。見た目の可愛さでSNSに投稿したくなり、味も本格的なので満足度が高い。これは「写真映え重視で味は二の次」だった従来のインスタ映え商品とは一線を画す。

「ちきゅうのにわ」は、イオンファンタジーが手がける屋内型プレイグラウンドで、0歳から12歳までの子どもが対象、地球や自然の神秘をモチーフに、「空」「火山」「氷山」など多彩なエリアで体を使って遊べる施設 だ。

この施設が注目される背景には、前述の「二季の国」現象がある。夏の猛暑、冬の厳寒により、子どもたちが屋外で安全に遊べる時間が減少している。さらに都市部では公園の減少、不審者への警戒から、親が子どもを外で遊ばせることに不安を感じている。

「ちきゅうのにわ」は、安全で快適な室内環境で、教育的要素も含めた遊び体験を提供する。「空」エリアでは雲のような柔らかい遊具、「火山」エリアでは登山を模した遊具、「氷山」エリアでは滑り台など、自然をテーマにした多様な遊びが可能だ。

検索者の属性を見ると、30代から40代の親世代が中心で、「子どもを連れて行ける場所」としての需要が高い。週末や雨の日の過ごし方として定着しつつある。

「ハイロックス(HYROX)」は、1kmランニングと8種のワークアウトを交互に行う”走るフィットネスレース”で、スキーエルゴやスレッドプッシュ、ウォールボールなど全身を使う種目で構成される 。2017年にドイツ・ハンブルクで誕生し、現在は世界30か国以上で開催 されている。

このトレンドは、フィットネスの「競技化」を示している。従来のジム通いは個人的な健康維持が目的だったが、ハイロックスは「記録を競う」という明確な目標を提供する。マラソンやトライアスロンと同様、完走証やタイム記録が残り、自己ベスト更新を目指す楽しさがある。

検索者の属性を見ると、20代から40代の男女がほぼ均等で、フィットネス意識の高い層が中心だ。SNSでは完走後の写真やタイム記録の共有が盛んで、コミュニティ形成も進んでいる。

「mojojojo(モジョジョジョ)」は、ぬいぐるみ作家・尾崎歩美さんが2013年に立ち上げた手縫いぬいぐるみブランドで、手縫いならではの温かみと、どこか”のほほん”とした表情が魅力 だ。

このブランドの成功は、大量生産品に対する反動としての「手作り・一点物への憧れ」を反映している。工場で機械的に生産されるぬいぐるみと異なり、mojojojoの作品は一つ一つ手縫いで作られており、微妙に表情が異なる。この「唯一無二感」が購入者の愛着を深める。

特にカプセルトイ(ガチャガチャ)シリーズは新作のたびに検索数が急上昇するほどの話題 になっている。ガチャガチャという「ランダム性」と「コレクション性」を組み合わせたビジネスモデルが、ブランドの人気を加速させている。

検索者の属性を見ると、20代から30代の女性が中心で、「癒し」「可愛い」というキーワードと共に検索されることが多い。ストレス社会における「小さな幸せ」を提供する商品として機能している。

「ラーティアオ(辣条)」は、中国で人気のスパイシーなお菓子で、小麦粉を練って乾燥させたスティック状の生地に、唐辛子や花椒、醤油などで味付けしたピリ辛調味料を絡めたもの だ。

韓国トレンドに続き、中国発の食文化も日本に浸透し始めている。ラーティアオは中国では庶民的なおやつだが、日本では「エキゾチックなスナック」として注目されている。独特の辛さと香り、もちっとした食感がクセになると若者を中心にブームになっている。

この商品の特徴は「刺激的な味」だ。日本の伝統的なスナック菓子は甘い、しょっぱい、といった単純な味付けが多いが、ラーティアオは唐辛子、花椒、醤油などの複雑な味わいがある。これは「味覚の冒険」を求める若者の嗜好に合致している。

「近沢レース店」は1901年(明治34年)創業の横浜・元町発の老舗レース専門店で、繊細なレースや刺繍を用いたハンカチ、ポーチなどの小物が人気で、贈り物としても高く評価されている 。異国情緒漂う上品なデザインが特徴で、2025年に入り検索数が急激に増加 した。

このトレンドは、「本物志向」「伝統工芸の再評価」を示している。120年以上の歴史を持つ老舗が、若い世代にも支持されているのは、「ファストファッション疲れ」への反動だ。大量生産・大量消費のサイクルに疲れた消費者が、長く使える質の高い商品を求めている。

近沢レース店の商品は、機械では再現できない繊細な手仕事が特徴だ。ハンカチ一枚でも、細かなレースや刺繍が施されており、贈答品として高い評価を得ている。「モノ」ではなく「技術」「伝統」「物語」を買うという消費行動の表れだ。

「アフューム(arFUM)」は、韓国で人気のランドリー用品ブランドで、中でもジェルボール型洗濯洗剤が人気、1粒で洗浄・抗菌消臭・柔軟・保護・香りの5役を果たし、上品な香りが長く続く 。カラフルで透明感のあるデザインや、香水のような華やかな香りが魅力で、SNSや口コミで注目を集め、“映える洗剤”として支持されている 。

このトレンドは、「日用品の美学化」を示している。洗剤は本来、機能性だけが求められる商品だったが、アフュームは「見た目の美しさ」「香りの良さ」という感性的価値を付加している。

カラフルなジェルボールは、洗濯という家事を​​​​​​​​​​​​​​​​

カラフルなジェルボールは、洗濯という家事を「楽しい体験」に変える。なぜなら、透明感のある美しいデザインを見るだけで気分が上がり、洗濯後の衣類から漂う香水のような香りが日常に特別感をもたらすからだ。具体的には、InstagramやTikTokで「#アフューム」のハッシュタグ投稿が急増しており、洗剤の容器やジェルボール自体を「インテリアの一部」として飾る人も増えている。これは日用品が単なる消耗品から「生活を彩るアイテム」へと昇華した事例だ。

検索者の属性を見ると、20代から30代の女性が中心で、「おしゃれな暮らし」「丁寧な暮らし」といった価値観を持つ層に支持されている。価格は一般的な洗剤より高めだが、「毎日使うものだからこそ、気分が上がるものを選びたい」という消費意識が背景にある。

「ブラインドボックス」は、中身が見えない小型フィギュアやグッズを、外観が同一の箱で販売する方式で、中身はランダムに封入されており、購入者はどれが当たるか事前にはわからない 。2025年にヒットしたラブブでも採用された方式で、レアやシークレットを含む収集性と、開封の楽しさが魅力 だ。

ブラインドボックスは、「不確実性」を商品価値に転換したビジネスモデルだ。消費者は「何が出るかわからない」というドキドキ感に対して対価を支払う。これはギャンブル的要素を含むが、景品表示法に抵触しない範囲で「ガチャの楽しさ」を物理商品で実現している。

心理学的には、この仕組みは「間欠強化」という行動原理に基づいている。報酬が確実に得られるよりも、ランダムに得られる方が人間の脳はより強く反応し、繰り返し購入したくなる。レアアイテムが出た時の喜びは、確実に手に入る商品を買う時の満足感よりもはるかに大きい。

ビジネス面では、企業にとって在庫管理が容易になるメリットがある。人気キャラクターだけが売れ残るのではなく、全種類がランダムに売れていくため、生産計画が立てやすい。またコレクター心理を刺激し、「全種類コンプリートしたい」という欲求が継続購入を促す。

検索データによると、ブラインドボックスは2024年から2025年にかけて検索数が急上昇しており、2026年も継続してヒットすると予測される。特に20代から30代の女性、及びコレクター気質のある男性が主要な購買層だ。

「ヨアジョン(YOAJUNG)」は韓国発のフローズンヨーグルト専門店で、自家製ヨーグルトアイスにコムハニーやフルーツ、ナッツなど多彩なカスタマイズが可能 だ。韓国で数百店舗以上を展開し、SNS映えスイーツとして人気に。2025年には大阪・コリアタウンで日本初上陸し、その後、新大久保や原宿にも出店 した。

ヨアジョンの成功要因は「カスタマイズ性」にある。基本のヨーグルトアイスに、20種類以上のトッピングから自由に選んで組み合わせられる。これは「自分だけのオリジナル」を作る体験価値を提供している。

また健康志向にも合致している。ヨーグルトは発酵食品として腸内環境改善効果があり、トッピングにフルーツやナッツを選べば栄養価も高まる。「美味しくて健康にも良い」という二重の価値が支持される理由だ。

SNS映えも重要な要素だ。カラフルなトッピングを盛り付けたヨーグルトボウルは視覚的に美しく、Instagramでの投稿が拡散を呼ぶ。店舗デザインも韓国風のおしゃれな内装で、「映える店で映える商品を食べる」という体験全体が商品価値になっている。

検索データでは、2025年の日本上陸以降、検索数が急増しており、2026年には全国展開が予想される。特に10代から20代の女性が主要顧客で、「韓国トレンド好き」「健康志向」「SNS映え重視」という特徴を持つ。

日経トレンディとヤフー・データソリューションの予測を総合すると、2026年の消費トレンドには明確な二極化が見られる。

第一の極:徹底的な効率化・苦労キャンセル

  • 生成AIによる翻訳・買い物の自動化
  • レンチン2分で生パスタ
  • 90秒でできるコンビニラーメン
  • 多言語リアルタイム翻訳

これらは「時間をお金で買う」「面倒な作業を技術で解消する」という価値観に基づく。消費者は、本質的でない作業に時間を使いたくない。語学学習に何年もかける時間があれば、その時間で本当にやりたいことをしたい。レストランに行く時間があれば、家でリラックスしながら同等の味を楽しみたい。

第二の極:体験価値・感情価値の追求

  • 手縫いぬいぐるみ(mojojojo)の温かみ
  • 老舗レース店の伝統技術
  • ブラインドボックスの開封の興奮
  • カスタマイズ可能なヨーグルト体験
  • 大人のシールという癒し体験

これらは「お金で時間を買う」のではなく、「時間をかけて楽しむ体験にお金を払う」という価値観だ。効率化で節約した時間を、より人間的な、感情を動かす体験に使いたいという欲求がある。

この二極化は矛盾しているようで、実は相補的な関係にある。効率化できることは徹底的に効率化し、そこで節約した時間とお金を、本当に価値ある体験に投資する。これが2026年の賢い消費者像だ。

ヤフー・データソリューションの10項目中、韓国・中国発のトレンドが4つ(コグマパン、ラーティアオ、アフューム、ヨアジョン)を占めている。これは一時的なブームではなく、アジア文化圏における消費トレンドの統合を示している。

韓国トレンドの特徴:

  • 見た目の美しさ(SNS映え)と実質的な品質の両立
  • K-POPやドラマで培われた「韓国ブランド」への信頼
  • 日本より先進的なトレンド発信力

中国トレンドの特徴:

  • 刺激的な味覚体験(ラーティアオの辛さ)
  • 巨大市場で鍛えられた商品力
  • 若者文化(小紅書、TikTokなど)を通じた拡散

日本の消費者、特に若い世代は、もはや「日本発」にこだわらず、アジア全体から良いものを取り入れる姿勢を持っている。これは文化的開放性の表れであり、グローバル化の進展を示している。

アナログ回帰の事例:

  • 大人のシール(物理的な手作業の楽しさ)
  • mojojojo手縫いぬいぐるみ(手作りの温かみ)
  • 近沢レース店(伝統技術への評価)

デジタル活用の事例:

  • 生成AIによる翻訳・買い物支援
  • SNSでの情報拡散・口コミ形成
  • データ分析によるトレンド予測

この2つは対立するのではなく、共存している。デジタル技術がアナログ商品の発見・拡散を助け、アナログ体験がデジタル疲労からの癒しを提供する。例えば、近沢レース店はInstagramでの投稿がきっかけで若い世代に再発見された。伝統的な商品をデジタルマーケティングで広める、というハイブリッド戦略が成功している。

2026年のトレンドには「確実性重視」という共通点がある。

  • エコノミーグルメ:安価でも確実に美味しい
  • うま確フード:見た目から美味しさが保証されている
  • AI買い物アシスタント:確実に満足できる商品を提案

これは、情報過多の時代における消費者の防衛本能だ。選択肢が無限にある現代、「失敗したくない」という心理が強まっている。レストランを選ぶにも、商品を買うにも、「外れを引きたくない」という不安がある。

「うま確」という言葉は、この心理を端的に表している。「美味しいことが確実にわかる」見た目や評判の商品なら、安心して購入できる。これは慎重な消費行動であると同時に、効率的な意思決定でもある。失敗のリスクを減らすことで、選択にかかる時間と精神的負担を軽減できる。

物理的なコミュニティ:

  • ハイロックス参加者のコミュニティ
  • ブラインドボックスコレクターのコミュニティ
  • シール愛好家のコミュニティ

デジタル・コミュニティ:

  • Instagram、TikTokでのハッシュタグコミュニティ
  • X(旧Twitter)での情報交換
  • LINE、Discordでのファンコミュニティ

2026年のトレンド商品の多くは、単体の商品価値だけでなく、「コミュニティに参加する」という社会的価値を提供している。ブラインドボックスを開封する様子をSNSに投稿し、同じ趣味の人と交流する。ハイロックスに参加して完走証を投稿し、仲間と励まし合う。これらは商品購入を超えた「所属の欲求」を満たしている。

マズローの欲求階層説でいう「社会的欲求(所属と愛の欲求)」が、消費行動と結びついている。孤独化が進む現代社会において、趣味を通じたコミュニティ形成は重要な価値を持つ。

2026年のトレンド予測で目立つのは、「サステナビリティ」が前面に出ていない点だ。2010年代後半から2020年代前半は、エコ、SDGs、サステナビリティが消費トレンドの主要テーマだったが、2026年予測ではあまり言及されていない。

これは「サステナビリティが後退した」のではなく、「前提条件になった」と解釈すべきだ。消費者は依然として環境配慮を重視しているが、それは特別な訴求ポイントではなく、商品選択の基本条件になった。

例えば、ヨアジョンのヨーグルトは健康志向の商品だが、その背景には「自然由来」「添加物少なめ」という価値観がある。しかしそれを大々的に宣伝するのではなく、当然の品質基準として扱われている。

高付加価値商品:

  • 近沢レース店のレース小物(伝統技術への対価)
  • mojojojo手縫いぬいぐるみ(手作りへの対価)
  • ハイロックス参加費(体験価値への対価)

低価格商品:

  • エコノミーグルメ(レンチン生パスタ)
  • コンビニセルフラーメン
  • ブラインドボックス(1個数百円)

2026年の消費市場では、「中途半端な価格帯」の商品が苦戦し、「明確に安い」か「高いが価値がある」かの二極化が進む。消費者は、日常的に使う消耗品は徹底的に安く済ませ、特別な体験や長く使える質の高い商品には惜しみなくお金を使う。

これは「賢い消費」の具体的な形だ。全てを安く済ませるのではなく、メリハリをつけた支出をする。食事は自宅でエコノミーグルメを活用し、節約したお金でハイロックスに参加する。日用品は機能重視の低価格品を選び、贈答品には伝統工芸の高品質商品を選ぶ。

日経トレンディが指摘する「時産」という概念は重要だ。従来の「時短(時間短縮)」は、「同じことをより短時間で済ませる」という発想だった。しかし「時産」は、「時間を生み出す」という積極的な概念だ。

時短の例:

  • 電子レンジで調理時間を短縮
  • タクシーで移動時間を短縮

時産の例:

  • 生成AIに翻訳を任せ、語学学習時間を丸ごと節約
  • AI買い物アシスタントで商品選択時間をゼロに

時産は、「活動を効率化する」のではなく、「活動自体を不要にする」という発想の転換だ。語学学習を効率化するのではなく、生成AIがあれば語学学習そのものが不要になる。商品比較を効率化するのではなく、AIが推薦してくれるなら比較自体が不要になる。

これは単なる便利さの向上ではなく、人生における時間配分の根本的な変化を意味する。節約された時間は、人間にしかできないこと—創造的思考、深い人間関係の構築、体験の蓄積—に使われるべきだ。

日経トレンディが指摘する「推され活」は、マーケティングのパラダイムシフトを示唆している。

従来のマーケティング(プッシュ型):

企業が商品情報を一方的に発信 → 消費者が受動的に受け取る

推し活マーケティング(ファン主導型):

消費者が能動的に情報を探し、応援する

推され活マーケティング(AI仲介型):

AIが消費者の嗜好を分析 → 個々に最適化された提案 → 消費者は「自分のために選ばれた」と感じる

「推され活」の本質は、「マスから個へ」の究極形だ。企業は不特定多数ではなく、一人ひとりの消費者に向けて、その人だけの特別なメッセージを送る。生成AIの発達により、これが大規模に実現可能になった。

Amazonの「あなたにおすすめ」は初期の形だが、2026年にはこれがさらに高度化する。単なる商品推薦ではなく、「あなたの今の気分を理解した上での提案」「あなたのライフステージに合わせたサポート」など、より人間的な関係性を模した体験になる。

ヤフー・データソリューションの予測手法は、ビッグデータとAIによる科学的アプローチだ。一方、日経トレンディの予測は、編集部の専門家による直感と経験に基づく。

興味深いのは、両者の予測が大きく矛盾していない点だ。これは「データと直感は対立するのではなく、相互補完的」であることを示している。

データ分析の強み:

  • 大量の消費者行動を客観的に分析できる
  • 人間の直感では見逃しがちな微細な変化を検出できる
  • バイアスのない予測が可能

人間の直感の強み:

  • 文脈や背景を理解した総合的判断
  • 「なぜ流行るのか」という因果関係の理解
  • 社会的・文化的な意味づけ

2026年以降のトレンド予測は、この両者の融合がさらに進むだろう。AIが膨大なデータから「これから伸びる」兆候を検出し、人間の専門家がその背景にある社会的文脈を解釈する。この協働により、より精度の高い予測が可能になる。

2026年のトレンドの中で、一過性のブームではなく長期的に継続すると予測されるもの:

生成AI活用の深化:

翻訳、買い物支援は2026年で完成するのではなく、さらに進化する。2027年以降は、教育、医療、法律相談など、より専門的な領域にも生成AIが浸透する。

韓国・中国トレンドの定着:

一時的な流行ではなく、アジア文化圏の消費トレンドが統合されていく。日本、韓国、中国、台湾などで、ほぼ同時に似たトレンドが発生する「アジア同時トレンド」が常態化する。

体験価値重視の加速:

効率化が進むほど、人間的な体験の価値は相対的に高まる。手作り、伝統技術、アナログ体験などは、希少価値が増し、プレミアム化する。

戦略1:二極化への対応

中途半端なポジショニングは避け、「徹底的な効率化」か「唯一無二の体験価値」のどちらかに特化する。あるいは両方を併せ持つハイブリッド戦略を取る。

戦略2:AIとの共生

AIを脅威と捉えるのではなく、顧客体験を向上させるツールとして積極活用する。ただしAIに全てを任せるのではなく、人間の専門性や感性を組み合わせる。

戦略3:コミュニティ形成支援

商品を売るだけでなく、その商品を中心としたコミュニティ形成を支援する。ファン同士が交流できるプラットフォームを提供し、ブランドロイヤルティを高める。

戦略4:確実性の提供

「外れがない」「期待を裏切らない」という安心感を提供する。品質の一貫性、わかりやすい価値提案が重要。

戦略5:カスタマイズ性の提供

画一的な商品ではなく、消費者が自分好みにカスタマイズできる余地を残す。「自分だけのオリジナル」を作る体験に価値がある。

賢い消費の実践:

全てを節約するのではなく、効率化できることは効率化し、節約した時間とお金を本当に価値ある体験に投資する。

情報リテラシーの向上:

AIの推薦を盲信せず、自分の価値観と照らし合わせて判断する。データ予測の背後にあるロジックを理解する。

コミュニティへの積極参加:

孤独化が進む社会において、趣味を通じたコミュニティに参加することで、社会的つながりを維持する。

本物を見極める力:

大量の情報に惑わされず、本当に価値あるもの、長く使える質の高いものを見極める目を養う。

日経トレンディとヤフー・データソリューションが予測する2026年の消費トレンドは、「効率化の極限追求」と「人間的体験の再評価」という二極化を軸に展開する。なぜなら、生成AIなどの技術革新が「できること」と「したいこと」の区別を明確にし、消費者は効率化できることは技術に任せ、人間にしかできない体験に時間とお金を集中投資する賢い選択を始めているからだ。具体的には、翻訳や買い物といった定型業務はAIに任せる一方で、手縫いぬいぐるみの温かみや伝統工芸の技術、リアルな体験を提供する施設など、人間的な要素を重視した商品・サービスへの支出は増加する。この傾向は2026年だけでなく、2027年以降も継続し、さらに深化していくと予測される。企業にとっては、この二極化を理解し、明確なポジショニングを取ることが成功のカギとなり、消費者にとっては、技術を賢く活用しながら人間らしい豊かさを追求する新しいライフスタイルの確立が求められる時代になる。​​​​​​​​​​​